片側が接地できる水晶振動子の発振回路

あけましておめでとうございます。

それにしても何年ぶりの投稿でしょうか。今回の記事はあまり一般的ではないと思われる形式の水晶振動子の発振回路について書きたいと思います。回路図を見てもわかりにくい回路で、しばらく他の仕事をしていると自分でも忘れてしまうので、まずは自分の備忘のために書いておこうと思います。でも、いざ書くとなれば発振回路全般の話やらOTA形の回路の話も(おそらくだらだらと)何回かに分けて書いてみたいと思います。

まず下の回路図をごらんください。
fedBackOtaXtalOsc実用回路.png

水晶振動子の発振回路といえば、今日もっとも一般的なのはCMOSインバータを使ったものでしょう。CMOSインバータに高抵抗でフィードバックをかけてリニア領域を拡大し、その入力と出力の間に水晶振動子を接続し、また入力とGNDの間、および出力とGNDの間にそれぞれに数10pFのコンデンサを接続します。これはコルピッツ回路の一種とみなせますが、折があったらそのへんの話もしてみたいと思います。この一般的な発振回路は水晶振動子の片側をアースすることができませんが、上の図は水晶の片側をアースできます。

発振回路の役割は水晶振動子やLCタンク回路の等価回路に含まれる等価的な直列抵抗または等価的な並列コンダクタンスを打ち消すことです。
LCR+NegativeR.png
上の図ではLCタンクに含まれる損失分を直列抵抗Rで代表しています。このRに対しーRという負性抵抗を外部に接続してやればタンク回路の振動電流は永久に持続します。水晶振動子の片側をアースできる発振回路は、片側をアースできる負性抵抗発生回路ということになります。

最初の回路図を簡単にしたのが次の図です。
fedBackOtaXtalOsc.png

この回路は4対のペアトランジスタTr1からTr4で構成されています。Tr1-1とTr2-1はダイオード接続されたトランジスタで、それらの接続点の電位がほぼTr1-2とTr2-2の接続点に現れます。つまりこれらはエミッタフォロワです。エミッタフォロワの動作するためのバイアス電流はそれぞれR1とR2を通して供給されます。R1とR2を定電流回路に置き換えればより完成度が高くなるのですが、ディスクリート部品で作ると部品点数が多くなるので今回はそこまではしていません。タンク回路(または水晶振動子)はTr1-2とTr2-2のエミッタに接続されているので、Tr1-1およびTr2-1側からタンク回路の電位は任意に指定することができます。

つぎにTr3とTr4はカレントミラーで、それぞれの動作電流は(ベース電流が誤差になるもののだいたい)Tr1-2およびTr2-2のコレクタ電流です。ですから、Tr3とTr4のカレントミラーのバイアス電流の値はR1とR2を流れる電流の値がもとになります。タンク回路の振動に伴って出入りする電流はTr1-2とTr2-2のエミッタからコレクタを貫通してカレントミラーのバイアス電流を増減させます。この増減はTr3-2とTr4-2の側で合成され、R3と通してアースに流れ込みます。つまりタンク回路に出入りする電流の値がほぼそのままR3に流れますが、途中でカレントミラーにより電流の方向は反転されています。この電流に伴いR3に発生する電圧がTr1-1とTr2-1にフィードバックされます。

タンク回路から発振回路(Tr1-2とTr2-2のエミッタ)を見た場合、たとえば電流が流れ出るほど電位が下がって流し込みやすくなるし、逆に電流を吸い込むほど電位が上がって吸い込みやすくなります。つまり負性抵抗が実現されました。

R3の値はRより大きくしておけばいいです。R3=Rでなくていいのか、という問題についてはまたの機会に考えたいと思います。片側をアースできる負性抵抗はオペアンプでも実現できます。また今回の回路はOTA(operational transconductance amplifier)の応用とみなすことができます。それらについても機会があったら……

そもそも今回のように水晶振動子の片側をアースしたいのは次のような場合です。蒸着膜の厚さを水晶振動子の周波数でモニターするというような用途にクォーツバランス(QCM)という技術が使われますが、水晶振動子を同軸ケーブルの先に取り付け発振回路から1メートルとか離れた場所に設置しなければなりません。米国の有名メーカーの少し古い装置をリバースエンジニアリングしてみたところ、ECLのラインドライバICが使われていました。これはドライバ出力に直列抵抗を介してケーブル(の先に水晶)を接続し、抵抗の両端の電圧降下で電流を検出してドライバの入力にフィードバックしていました。上記のオペアンプによる負性抵抗もあるし、いろいろな方法があるわけですね。

さて、最初の回路についてもう少し解説しますと、負の電源電圧を使うと煩わしいのでR3を2個の1kΩに分けて電源電圧の分圧を兼ねることにしました。MMBT3906とMMBT3904はバッファアンプです。ここは1回路入りCMOSロジックなどでもいいのですが、全部ディスクリートで作りたかったので。2個の100kΩでフィードバックをかけることでDC動作点を電源電圧の中点に安定させたうえで、入力信号は22pFでそれぞれのトランジスタのベースに結合させています。電源電圧が何Vから発振するかは個体差があり、3V以下のものもあれば3.3Vでも怪しいのもあります。電源電圧は5Vでもバッファ出力は3.3V系で受けたい場合、MMBT3906と5V電源の間に赤色LEDを1個入れておけばOKです。

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