アナログ積分のリミッタ

たいへんご無沙汰しています。
このままでは今年は一度も更新しないことになりそう。
なのでひとつ投稿しておきたいと思います。

オペアンプとコンデンサによるアナログ積分回路の積分値を、ある電圧で制限する回路です。

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以前、本ブログでは電圧リミッター付きPI制御器というネタを扱いました。このとき使った手段は、積分器の後段に出力電圧の上限と下限をリミットする回路は理想ダイオードなどと呼ばれる回路を追加したものでした。

今回は積分器自体に電圧制限をかけるようにしました。

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今回の目的は、機械振動子に自励振動を起こさせるための回路のAGCに使うI制御器です。振動振幅がRFパワー検出器IC,AD8362によって検出され、AGCはそれが目標値と同じになるようにRF乗算回路AD835にフィードバックをかけることで成立しますが、AD835へ入力する電圧を0から1Vの間に制限したいのです。

積分制御(I制御)やPI制御において、積分器自体に電圧制限を付けずに後段で電圧制限することは、じつはトラブルのもとです。

たとえば巻き上げ機の吊り荷の位置をI制御する場合を想定します。吊り荷が何かに引っかかっていて、モーターの出力の限界まで巻き上げ力を上げても持ち上がらないとしましょう。この場合、積分制御器の後段にモーターの出力という制限が付いているわけです。吊り荷が上がらないと、目標値と実測値の誤差がずっと積分され続けるため、引っかかりが外れた途端に吊り荷が全力で巻き上げられ、目標値に達しても積分値が残っていますから、最上部まで巻き上がってしまう、というようなことが起きます。だから「ワインドアップ現象」というと電気工学科で教わった記憶があります。

この現象は積分制御ループのどこが制限されても起こり得るでしょうから、積分器に電圧制限を掛けても完全に防止するのは難しいでしょう。しかし、積分器は勝手に動作させておき、積分器とAD835の間に電圧リミッタを挿入する方法では、自分が作るシステム内にワインドアップ現象の原因を作りこむことになるので、積分自体を電圧制限したいと思いました。

回路の動作を見ていきましょう。バイポーラトランジスタTr3とTr6のコレクタ-エミッタが積分器の積分容量と並列になっています。出力電圧が+1V以上になったらTr6をONに、-1V以下になったらTr3をONにして積分器の入力電流と同じ電流値をこれらのトランジスタにバイパスさせます。

Tr3の方の動作を具体的に説明します。Tr2のコレクタに流れる電流は、Q1とTr1から成る電流源によって、積分器の入力電流と同じになるように制御されています。Tr2のエミッタ電位は常に制限したい電圧(-1V)に固定されています。それに対してベース電位は、Tr2のコレクタにちょうど上記の電流が流れる値に、自動的になります。

Tr2とTr3の部分は、エミッタが同電位ならカレントミラーそのものです。Tr3のエミッタ電位がTr2のエミッタ電位つまり-1Vになると、Tr3にもTr2と同じ電流が流れ、積分容量には電流が流れなくなり、積分が停止します。

Tr3のエミッタ電位が-1Vよりわずかに高い時は、Tr3のコレクタ電流は流れ始めていますが、積分容量に流入する電流の一部しか吸い取ってないので、積分値はまだ変化し続けます。つまり完全なスイッチではありませんが、積分値がリミットに達するというのはすでに正常動作ではありませんから、その近傍で積分が少し遅くなるのは実用上問題ありません。

この方法は、積分容量にダイオードやツェナーダイオードを並列にしただけの単純なリミッタよりも、リミット電圧の精度においてはるかに正確です。単純なダイオードリミッタでは積分器の入力電流が変わるとリミット電圧も変わってしまいます。

積分器自体は±1Vの範囲でリミットされますが、+1Vとの平均をとることで0~1Vの範囲に変換しています。

ところで、この回路はTr3やTr6のベース・エミッタ間は逆バイアスになることがあります。今回の制限電圧は±1Vなので、2SC1815や2SA1015のVEBO(5V)を超える逆バイアスはかかりません。しかし、条件によっては配慮が必要になります。

回路図左下のトランジスタを使った回路は、AGCを停止して最大ゲインに固定するための押しボタンスイッチを入り切りする回路です。すなわちTフリップフロップです。今回はディジタルICを使わないで行ってみようと思ったわけです。この部分は電子工作の部屋さんのここを参考にさせていただきました。AGC動作しているときはLEDが点灯します。LEDが点灯しない状態のときは積分器に入力される誤差電圧を負側に飽和させることで、積分出力が正に飽和します。


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