直列共振と並列共振と発振回路

純粋なLC共振はLとCのループなので、LとCのトポロジーとしては直列も並列もありません。思うに、直列共振とか並列共振という概念は次の2つの場合に意味があるでしょう。まずシンプルにコイルとコンデンサを直列に接続したものを回路の一部として扱うときに直列共振(回路)、コイルとコンデンサを並列に接続したものを回路の一部として扱うときに並列共振(回路)と呼ぶということです。またLCタンク回路の損失が直列抵抗的であれば直列共振、並列コンダクタンス的であれば並列共振という感じがします。

図1(a)はL, C, Rの直列回路、(b)はL, C, G(コンダクタンス)の並列回路です。
LCR&LCG.png

そもそもタンク回路の損失の実際の原因はさまざまで、コイルには巻線抵抗のような線形的な損失だけでなく鉄心のヒステリシス損もあるし、コンデンサには等価直列抵抗だけでなく漏れ電流も流れるかもしれません。ですが、とりあえず図1の(a)または(b)のモデルを想定し、共振周波数の付近では(a)と(b)のモデルを相互に変換して大きな問題はないことを示そうと思います。

(a)のインピーダンスと(b)のアドミッタンスを次のように定義してみます。
xlcrylcg.png
(a)のインピーダンスの逆数をとってみると、
invXlcr.png
となります。右辺の各項は(b)のアドミッタンスと各項に対応しますが、XLは周波数に比例、XCは周波数に反比例するので、それぞれ周波数の項を複雑に含むことになります。しかし共振周波数近傍ではXLXCなので、G≒1/Rという単純な関係になります。

発振回路は言うまでもなく共振周波数で動作するうえに、もとより発振回路に使うLやCは損失が相対的に小さいはずなので、(a)と(b)のどちらがタンク回路の損失の現実に近いとしても、発振回路の設計者の都合の良い方を採用して問題ありません。

直列共振モデルに基づく発振回路とはどういうものでしょうか。
LCR_typeEqCircOsc.png
LCR直列回路をそのまま閉回路にすると図2(a)のようになります。もしRが無ければ図中のVLCは常にゼロです。しかしRが存在すると共振電流Iに比例した正弦波電圧VRが発生し、VLCはそれと逆方向に振れる正弦波を示します。発振回路の任務はLCR直列回路にさらに直列に挿入した制御電圧源を操作し、VLCをゼロに戻すことです。どうやって操作するかというと、電流を検出してそれに比例した電圧を発生させればいいということになります。前回の記事では水晶振動子に直列の負性抵抗を接続して発振させました。つまりRに対して-Rという負性抵抗を接続して損失をゼロにしたわけですが、回路の動作を細かく言い換えれば、検出した電流に比例した電圧を発生させる回路を作ったということになります。

次に並列共振モデルに基づく発振回路の動作原理を見てみましょう。
LCG_typeEqCircOsc.png
もしコンダクタンスGが存在しなければLCG並列回路のLとCに流れる共振電流はLC両端の電圧Vと90度の位相になります(図3(a))。しかしGが存在すると電圧に比例する漏れ電流IGが流れるため、その分位相がズレるとともに振幅が減ります。発振回路の役割は電圧Vに比例する電流を共振回路に注入し、Gによる漏れ電流を補うことです。

発振回路の基本構造はコルピッツ回路またはハートレー回路を真似すればいいという説明か、あるいは途中から数式で証明するような説明のされかたが多いかと思いますが、上記のように考えるほうがよく理解した気分になると思います。

では現実の発振回路は直列共振モデルタイプと並列共振モデルタイプのどちらが主流でしょうか。私が知る限り並列共振モデルタイプが主流です。コルピッツやハートレーも並列タイプに分類できるでしょう。なぜそうなるかというと、直列共振タイプではタンク回路の電流が全部発振回路を通過しますから、回路自体のインピーダンスが十分に低くないと直列抵抗Rを負性抵抗で補うどころか、発振回路自体が損失になってしまいます。現実的に言ってこれは水晶振動子のような微弱電流でのみ可能です。

これは電力の大きさだけでなく、現実の発振回路はリニア動作ではなくスイッチ動作をしている場合が多いことにも関係があります。このことはまた記事を改めて扱うかもしれませんが、簡単に言えば現実の発振回路はタンク回路の損失をちょうどぴったり打ち消すだけのゲインを持つわけではなく、発振をスタートアップする局面では損失の「補正しすぎ」状態でなければなりません。振幅が育った後に一定振幅が維持されるのは、多くの場合、リニアリティの高いゲイン調整手段(つまり乗算器)で行われるわけではなく、電源電圧による限界のために波形の一部が潰れ、1周期を均してみた時にゲインが1になって均衡するだけのことです。このような動作でも並列共振タイプならば共振回路自身が閉じているため電流のパスがあります。しかし直列共振タイプでは1周期のある部分だけでも発振回路の中を電流が流れないということは許されず、全域にわたって比較的にリニアリティの高い動作を保証しなければなりません。水晶振動子の発振回路でも、片側がアースできなければ都合が悪いというような事情がなければ、直列共振モデルに基づく発振回路はあまり登場する機会はないように思います。

ここで次のような疑問が提出されるかもしれません。
Q1 水晶振動子は直列共振を利用するものだから、すべて直列共振モデルに基づくのではないか?
Q2 並列共振タイプで片側をアースできる回路はできないのか?
これらはまた項を改めようと思います。
また、多くの発振回路がコルピッツ回路と見なせることとか、クラップ発振回路もあのDCバイアスを省いたコルピッツ回路には当てはまるけれど、どうも本質的には間違っている気がする、というような話題も、いずれ扱ってみたいと思います。

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