Walkie Jockeyの回路2:波形生成とマイコン周辺

Walkie Jockeyは高電圧のランプ波(ノコギリ波)発生装置。従来の鳩歩堂製ピエゾウォーカードライバーは低電圧のランプ波発生回路に高電圧アンプと放電回路が付いていましたが、今回は小型化する必要もあって高電圧アンプでランプ波を直接発生させています。

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ランプ波は直線的に電圧が上昇すればいいので、これは積分器にすればいいわけです。なんでいままでの装置はそうなっていなかったのか……
 アナログの積分器といえば定電流源+コンデンサです。オペアンプを使った積分器は普通出力と反転入力の間に積分容量を接続し、入力抵抗を通して一定電流で充電します。これは反転入力端子がイマジナリーショートで接地電位になることを利用しています。積分容量を放電するにはオペアンプの出力を接地に短絡するわけにはいきません。積分容量の両端をショート、すなわちイマジナリーグランドに対して放電する必要があります。
 しかるに、ピエゾウォーカードライバーの目的は圧電素子にランプ波形を印加することですが、圧電素子の片方の端子は接地できるような駆動回路のほうが便利です。というのは、沢山のウォーカーの圧電素子から配線が出ているとか、真空中にウォーカーが設置されているという場合、なるべく配線が少ない方が楽です。ちなみに回路を作る都合で言えば、圧電素子がフロートになっていて両方の端子が出てきているほうが楽で、上記の積分器の積分容量の代わりに圧電素子を接続すればいいわけです。さて、圧電素子の片方の端子を接地した場合、高電圧まで出力可能な電流源でそれを充電すれば、一定の傾きで電圧が上昇します。これも積分器です。しかし、圧電素子の容量が変化すると同じ電流を流しても電圧の上昇速度が違ってしまう。まぁそれでも実用上問題は無いのかも知れませんが、いちおうどんな容量でも同じレートで電圧が上昇するようにしたい。というわけで、従来はランプ波形は予め低電圧で作っておいて、電圧アンプで高電圧に増幅して圧電素子に印加するというような設計を選んできたわけです。

回路図を見てください。Class C High Voltage Ampはその左側のオペアンプOP2に接続された電圧ブースターです。ブースター付きオペアンプ全体で高電圧まで動作するオペアンプみたいなものです。C1が積分容量で、高電圧オペアンプとこのC1で積分器を構成します。入力電流はR23を通して流れ込みます。その前のPolarity SwitchはデジタルトランジスタをONにすると等倍の反転、OFFにすると等倍の非反転になる回路です。マイコン内蔵のDACの電圧をそのまま、あるいは反転してR23に入力します。

Class C High Voltage AmpがなぜC級かというと、Q1とQ2のベースにバイアス回路がないため、オペアンプOP2の出力電圧が±0.6V程度を越えないとQ1, Q2, Q3, Q4に電流が流れないからです。またこのアンプは出力に電流増幅段がありませんから、出力が地落しても過大電流が流れる心配がありませんし、OP2の入出力をアナログスイッチでショートするとOP2の出力電位がゼロになるので、Q1, Q2, Q3, Q4すべてOFFになり、Class C High Voltage Ampの出力はハイインピーダンス状態になります。つまり、積分電圧が所定の値に達したらアナログスイッチをショートしてやると積分が完全に停止します。これはDAC出力をゼロにする(オフセット電圧が残留する)よりも確実に積分を停止できます。

ピエゾウォーカーの動きの善し悪しは電圧がいかに短時間でゼロに戻るかにかかっています。つまり圧電素子の放電電流は大きい方が良く、数A流せる方が望ましいですが、その電流は常に接地に対して流せばいいので大きなMOSFETで接地にシャントしてやればいいということになります。ちなみに低電圧のランプ波形発生回路を巨大な高電圧アンプ増幅して圧電素子に印加する方法もありますが、放電のためだけに常に大電流を流せる巨大アンプを用意するのはたいそう無駄なことで、ましてやWalkie Jockeyのような小型化は望めません。さてそれで、圧電素子は接地に対してMOSFETで放電しますが、それと同期してC1を放電させるスイッチを別途設けるのは面倒なので、同じMOSFETで放電してしまいます。その際OP2の反転入力に高電圧のスパイクが掛からないように、D8とD9を使って保護することにしました。

放電用MOSFETがQ5とQ6です。以前はいずれもNチャンネルMOSFETを逆直列にしてホット側のMOSFETのゲートをパルストランスで駆動していましたが、今回は負電圧側はPチャネルMOSにして並列にしました。以前Nチャネルの逆直列にしていたのは、高電圧で大電流を流せるMOSFETはNチャネルタイプしかないと考えたからです。既存のPチャネルでは不足かどうかの吟味が足りなかった、パルストランスを使ってみたかった、Pチャネルを採用した場合に負のゲート電圧を作るには複雑な回路が必要なのではないかと思っていた、などの理由もあります。ようするに経験不足だったとも言えます。今回は2SJ512で十分な性能が出ることを予め確認したので、このような構成にしました。マイコンの正極性のパルスで両方のMOSFETを同時にONにする(正電圧の時はNチャネル負電圧の時はPチャネルだけでもいいが両方ONにしてもかまわない)ため、NチャネルとPチャネルではゲートの駆動回路の構造が違っています。

ランプ波形の電圧は正でも負でも絶対値回路で正に変換され、V_SENSEに出力されます。V_SENSEはマイコン内蔵のコンパレータで基準電圧と比較され、基準電圧を上回っていると直ちにTC7W74_CLがアクティブになってこのフリップフロップを反転させます。そうするとアナログスイッチがONになるのでOP2の出力電位がゼロVになり、C級電圧ブースターの出力がハイインピーダンスになり、積分電圧は変化しなくなります。ここまではハードウェアでやってあるので、MOSFETによる放電はTC7W74_QBが変化したのをマイコンが検出してから行うという手順を踏んでもその間にC1および圧電素子の電圧が変化することはありません。

Polarity-free External Inhibitというのは、Walkie Jockeyの動作を強制的に停止させる外部信号を受け付ける回路です。入力コネクタは3.5mmのジャックで、負でも正でもフォトカプラのLEDが点灯さえすれば止まるようにしてあります。高速に応答させるため、V_SENSEを強制的につり上げ、ハードウェアによって積分を停止させます。

フォトMOSリレーは回路が停止している時に出力を接地するためのB接点のリレーです。

C2はなぜ必要かというと、これが無いとアナログスイッチがOFFになったときにOP2出力電圧がオーバーシュートしてランプ波形のはじめの部分が急に立ち上がるためです。この容量はわりと広い範囲でなんでも良いような性質があります。

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マイコンにはPIC24のうちでもアナログのペリフェラルを豊富に搭載しているタイプを使いました。リング状タッチセンサMicroNavRingは秋月で売っているものです。使い方はメーカーが出しているドキュメントに詳しく書かれているのでここでは説明しません。ここで面白いのは、Walkie Jockeyには電源専用スイッチが無く、2個の押しボタンのどっちを押してもONになることです。

ボタンが押されていないとき、PチャネルMOSFETの2SJ297のゲート電位は2MΩでソースと同一電位につり上げられているので、このMOSFETはOFFになっています。また0.01uFの両端とも同じ電位になっています。いずれかのボタンが押されると0.01uFの左側の電位がゼロになるので0.01uFを通して一瞬充電電流が流れ、2SK297がONになります。ONになっている間に3.3VのレギュレータICであるTAR5S33が立ち上がり、マイコンが立ち上がると直ちにデジタルトランジスタをONにして2SK297を常にON状態に保ちます。しばらくWalkie Jockeyが操作されないとマイコンがデジタルトランジスタをOFFにし、その結果2SJ297がOFFになって全体の電源が切れます。ボタンを押したときに0.01uFを介して2SJ297のゲートを駆動しているのは、もしここを直結にしてしまうとデジタルトランジスタをOFFにしても2SJ297がOFFにならないからです。こうしておけばWalkie Jockeyの上に何か荷物が置かれていたとしても、そのままにしておけば電源がOFFになります。ただしこの場合2MΩを通して若干の電流が消費されます。

電源が入ってからは押しボタンはマイコンの入力にも使われます。2個のボタンをそれぞれ区別して使うことももちろんできますが、Walkie Jockeyではリング状センサが操作された際に、押されているボタンの個数がゼロ、1個、2個のいずれかによって動作を切り替えるという使い方をしています。ゼロ個の場合リングセンサ1回転で36発のパルスを出すモード、1個の場合ボタンを押している間中パルスが出続け、その周波数はリングセンサをどっちに回すかによって変わります。2個のボタンが押されている場合は電圧振幅設定モードになります。

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