100kHzアナログBPF

ご無沙汰しています。
昨年度は年末に1回しか更新しなかったこのブログ。昨年度は1年近くかかって原子間力顕微鏡のカンチレバーに自励振動を発生させるための回路と専用のFM検波回路を作っていて、追々その要素を投稿しようと思っていたのですが、最終的にまとまった話になるように書くというのが面倒だったため、けっきょくアナログ積分のリミッターについて書いただけで終わっていました。

そこで、全体がまとまらなくてもいいや、と思い直し、要素要素を時々紹介しようと思います。今回はオーソドックスなアクティブフィルタをまじめに設計して作ったという話です。

上記の自励振動回路は、カンチレバーの速度信号からBPFでノイズを取り除き、位相を調整してアクチュエータにフィードバックします。その間に振幅が一定になるようにゲインを調整したりもします。カンチレバーの共振周波数はそれぞれ違い、それに合わせてBPFの中心周波数を変更するわけにはいかないので、スーパーへテロダイン方式の受信機のようにIFに周波数変換してBPFや位相調整などを行い、最後にスーパーへテロダイン方式の送信機のようにもとの周波数に戻して出力します。

今回の話はそのIF段のBPFの紹介です。中心周波数は100kHzです。発振周波数が300kHzとか2MHzあたりなので、やや低めのIFだと思います。研究室ではこれまで鳩歩堂が10年前に作った同様の装置を使ってきました。当時は発振周波数200MHzまで使えるように作って欲しいということだったので、RFが200MHzならIFは自然と10.7MHz、という感じで決めてしまい、BPFには市販のセラミックフィルタやクリスタルフィルタを使いました。しかし、それらのフィルタの使い方が下手だったせいもあるのですが、通過帯域をフラットに調整したり維持するのなかなか難しかったです。そこで、今回は設計者が責任を持ってアクティブフィルタで作ることにしました。

また最近は発振周波数は2MHz以下で使うことが多くなってきたため、FM検波においても中心周波数に対するデビエーションがもっと大きくとれるように、より低いIF周波数を使う方がいろんな意味で楽だということになってきました。帯域が5kHzから50kHzという要請があるので、Qが高くなりすぎずオペアンプで組めるIFの中心周波数ということで、100kHzと決めました。いずれ紹介するつもりのレシプロカルカウンタ式FM検波器には、周波数が低いほど分解能が上がるという性質があるので、その面からも妥当な周波数だろうと思います。

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外観です。
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プラグイン式になっていて、それぞれのストリップに、いずれも中心周波数100kHzでそれぞれ帯域50kHz, 20kHz, 10kHz, 5kHzのBPFが作り込まれています。

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オペアンプはAD8065です。コンデンサが斜めに付いていたりして、ちょっと昔のアマチュア無線の自作リグっぽくもありますね。

フィルタ特性は3次バターワースをBPFに変換したやつで、回路形式は状態変数型が3個カスケードになっています。オペアンプは各ストリップに9個ずつ必要で、高速オペアンプなのでかなり電流を消費します。その結果けっこう熱くなり、周波数特性のドリフトがちょっと多いです。次に設計することがあれば、もう少しスカスカに実装するほうがいいでしょう。左端のAD8065の左側と、3番目のA8065の下に付いているのはフィルムコンデンサで、状態変数フィルタの2つの積分容量です。これをセラミックコンデンサにすると、調整中に中心周波数がずれてしまうというほど温度特性が悪くなります。

基板の設計は10年以上前のバージョンのPCBEを2004年頃のノートPCで走らせてやっております。PCBEのファイルの中に素子定数も書き込んであります。実は鳩歩堂ではよくあることなのですが、基板の設計データと実物があって回路図が(まだ)無いため。

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設計は「電子フィルタ 回路設計ハンドブック (マグロウヒル電子回路技術シリーズ)」という本を参考にしました。

そうそう、調整はどうやったかというと、カスケードされいている3つの状態変数型2次フィルタをそれぞれ切り離して調整用の信号に接続できるようにスライドスイッチが設けてあります。まずそれぞれの2次フィルタを切り離し、ネットワークアナライザでそれぞれの中心とQを調整し、最後にカスケード接続に戻して微調整しました。

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この記事へのコメント

TI
2015年07月25日 17:39
毎回わくわくする記事をありがとうございます。測定器のフロントパネルの設計の仕方もたいへん勉強になっています。質問があります。
スーパへテロダイン方式ではなく、同期検波を行えはBPFでなくLPFで済み設計が簡単になるように思ったのですが、IFを100kHzに設定する理由が何かあるのですか?
2015年07月26日 00:23
コメントありがとうございます。

長ーいコメントを書いたら800字制限を超えてしまったので、急遽本文として投稿します。最新の記事をご覧ください。

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