正弦波水晶発振回路

ある回路の校正用に2MHzの正弦波発振器を作りました。

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まず経緯から。
可変BPFの一桁周波数が高いバージョンも作る予定でNF回路設計ブロックの1.59MHzまで設定できるフィルタモジュールを用意していたのですが、ユーザーが1.8MHzまで伸ばしてくれというのでそれが使えません。2MHz程度なら現在の高速なオペアンプでいけそうなので、オペアンプとDACを組み合わせて可変フィルタを作ってみようということになりました。ちなみに学生時代に買ったアクティブフィルタについての本によると状態変数フィルタは高周波には使えないとなっています。でもオペアンプの広帯域化はその後めざましいですから。

ちょっと疑問なのは、高速なADCとDACが付いたFPGAボードがあればディジタルでも行けるんじゃないかということ。そっちの経験はあまりないので公平に比較しにくいですが、アナログでやるためには回路方式を考えデバイスの選定もしなければならないし、ハードウェアから電源から何からみんな作らなければならないからたいへんです。でもこっちの方がじつは好きです。

さて、詳しくは完成してからまたアップしたいと思いますが、オペアンプによる積分器の入力抵抗を乗算型DACのR-2Rネットワークに置換するだけでよさそうです。

R-2Rネットワークを電圧出力のDACとして使うには電流-電圧変換のためのオペアンプを必要とします。乗算型の場合このオペアンプは外付けになっていていろんな使い方ができるようになっています。積分器の入力抵抗を直接R-2Rネットワークに置換する方法以外に、電圧出力の乗算型DACを時定数固定の積分器の前か後ろに接続してやれば状態変数フィルタの共振周波数をディジタル値で設定できます。その方法のメリットは後で書きますが、デメリットはオペアンプが沢山いることです。もともと状態変数フィルタ(バイカッドフィルタも含めることにします)は3個のオペアンプがループになっています。それが5個に増えてしまいます。扱う周波数が高くなると個々のオペアンプでの遅延のために特性が理論値からずれてくるのが目に見えています。R-2Rネットワークを直接積分器の入力抵抗に使うとループ内のオペアンプは3個のままでいけます。

R-2Rネットワークをそのまま積分器の入力抵抗に使う場合のデメリットは、集積回路のRの絶対値はあまり当てにならないことです。だから何らかの方法で校正しないと使えません。絶対値が当てにならないのに対し、集積された複数の抵抗器の抵抗値の比はよく合っているため、R-2R型DACには電圧出力に変換するためのフィードバック抵抗も内蔵されています。これを使って電圧出力に変換すると電圧の絶対値は保証されます。その分は校正する必要がありません。だからオペアンプが増えても電圧出力に変換するメリットはここにあります。しかし2MHzあたりになると積分容量は数pFから数10pFになりますから、容量の絶対値もあまり当てなりません。やっぱり何らかの校正方法を考えておく必要があります。

そういうわけで、周波数がはっきりしている正弦波を入力し、LPF、HPF、BPFの各出力の振幅を比較することで校正しようと思います。

さて今回も得意のプッシュプル発振器です。同じプッシュプル構造で先日は50MHzのLC発振器を作ったし、水晶発振器からいきなり逓倍する回路も作ったことがあります。

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この回路はコルピッツをプッシュプルにしたものです。シングルのコルピッツはタンク回路のCを2分割し、片方のCの両端に発生する電圧がトランジスタ(あるいはFET)のベース(FETの場合はゲート)を駆動し、それと同相の電圧がエミッタ抵抗(FETの場合はソース抵抗)に発生するのでそれをもう一方のCに供給することで発振を維持するわけです。CMOSインバータに高抵抗でフィードバックをかけてリニア領域を拡げ、そこに水晶振動子を接続して発振させるというのがディジタル回路のクロックでは定番ですが、あれも同調容量といって水晶の両端からコンデンサをグランドに対して接続します。あれも一種のコルピッツとみなすことができます。

このプッシュプルコルピッツはタンク回路のCを3分割します。ベース電圧を検出するコンデンサはそれぞれのトランジスタに割り当てられています。駆動電圧が印加されるコンデンサは中央の1個で差動電圧がかかるようになっています。

もともと水晶振動子は強力なバンドパスフィルタですから、水晶振動子の両端はきれいな正弦波になっているものと思われます。厚みすべり振動をする水晶振動子は3次とか5次オーバートーン発振ということができるので、バンドバスフィルタと言っても3倍とか5倍の高調波にもピークを持つのではないかと思われます。しかし弦の共振周波数と異なり、厚みすべり振動の高次モードは基本モードのぴったり3倍とか5倍よりは少しずれているようです。だから水晶の両端では正弦波と思われるのですが、ここはセンシティブな部分なので、ここから信号を取り出すべきではないでしょう。

エミッタはインピーダンスが低く、またその電圧はベース電圧とだいたい並行に変化しますから、ここから出力を取れば水晶の両端の波形とだいたい同じになります。今回の回路では中央のCとパラに27uHのLが付いています。これは高調波を減衰させるためです。このLとCによる並列共振は、目的の発振周波数よりも低い周波数に同調してやり、目的の周波数では容量性が残るようにします。最終的にはスペアナで高調波がいちばん小さくなるようにトリマを回して調節しました。トリマと固定容量の和がいくらになっているか実測してみたら252pFでした。2MHzに対して27uHと共振する容量は230pF程度なので、18pF分は容量性になっていることになります。

最近はマイコンのクロックに2MHzという周波数の低い水晶振動子は使わなくなってきましたが、CMOSインバータで発振させる場合の同調容量はたぶん33pFあたりが相場ではないかと思います。CMOSインバータで発振させるときはこの同調容量が2個直列になるので、トータルで15pF程度になっていると思います。

さて今回の回路ではベース-エミッタ間の容量をどんどん大きくしても発振が止まらず、むしろ高調波が減るので、ついに880pF(200pF+680pF)まで達しましたが、まだ大きくしても発振するようです。この容量を大きくする方がベース-エミッタ間にかかる信号振幅が小さくなるので、ドライブが弱くなって高調波が減るということでしょう。また、こんなに大きくても発振するというのを考えると、やっぱりプッシュプルは理想的だと思います。そういうわけで、真ん中のLCタンクが18pFの容量性になっているとして、両端の880pFを総合しても17.6pF程度です。まずまず妥当だと思います。

歪みをスペアナで観測しました。

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スペアナの入力インピーダンスは50Ωなので、コンベンショナルトランスで100分の1にインピーダンス変換して接続しました。はたしてこのトランスのヒステリシスによる歪みはどうなのか、という疑問があります。コンベンショナルトランスなしでハイインピーダンスで受ければもっと大振幅でむしろ低歪み?

ところがオペアンプで2MHzにピークを持つQ=3程度の2次ローパスフィルタ(多重帰還型と正帰還型両方やってみた)を取り付けてみたところ、かえって2次高調波が増えてしまいました。このくらいの周波数になるとパッシブフィルタでないと歪みは減らないな、という感想です。

ではこの発振器を何に使うかというと、オペアンプによるバンドパスフィルタ。それでは論理矛盾のようですが、あくまでこれは校正用で、これから作ろうとしているフィルタの用途では多少の歪みはあまり問題にならないので、論理矛盾と言うほどではありません。ただ、高調波が重畳すると校正結果に誤差が増えることが考えられます。

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