ちょこまカー実習回路セットの電圧計

ちょこまカー(超シンプルライントレーサー)を大学の授業に使うには、当然、アナログ電子回路の基礎を学ぶというマジメな内容とセットでなければなりません。

そのために用意しているのが、ちょこまカーの各ブロック(たった6石ですが)を取り出して波形などを観測できるように作った実習セットです。5班分用意してあります。

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高校生対象の工作教室などでは時間があまりないので、オシロスコープの使い方を教えている時間もないし、会場まで運ぶのがたいへんです。そんな場合は電圧計を2個ずつ用意して信号電圧の変化などを観測してもらうほうが便利なのですが、いままで秋月電子で買った1台350円のデジタルテスターでやってました。ところがこのテスターが次々故障します。それにアナログ電圧計の方が直感的でもあります。今回専用のアナログ電圧計を作ることにしました。

何が専用かというと、レンジが1.5Vということと、入力インピーダンスが高くなっていることです。後者の要請により、入力アンプが必要になります。実習セットは1.5V電源で動作するのでこのアンプも1.5Vで動作するように作りたいものです。

電源電圧1.5Vのアナログ回路というのはどんな構造が可能かという問題は、ちょこまカー自体の開発でだいぶよく分かってきました。つまり普通のオペアンプのような差動増幅は不可能で、CMOSインバータのような構造でいける範囲を模索することになります。ここでもCMOSライクなバイポーラ回路を使うことにしました。

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反転増幅器にフィードバック回路を付けて0.5倍のゲインのアンプを構成します。このアンプの入力インピーダンスは200 kΩになります。なんで0.5倍にしたかというと、入力電圧はアンプの電源電圧と同じ0 Vから1.5 Vまで変化する可能性がありますが、電源電圧付近までアンプの出力を振らせることはできないので、ゲインを半分にとどめておいて、その範囲で100μAフルスケールの電流計が端から端まで触れるように電流計の直列抵抗を設計すればいいという考えです。

アンプのゲインはとりあえず無限大として計算します。
入力電圧が0 Vおよび1.5 Vのとき、出力電圧は極性が反転するので、
1.5/2 + 1.5/4 = 1.125 V および
1.5/2 - 1.5/4 = 0.375 V になります。

電流計はセンターメータはあまり売ってませんから、普通の左側が0になっている電流計(実際は秋月で売っている1000円のメーター)にします。そうすると、入力ゼロVの時には電流が流れてはいけませんから、R1とR2による分圧器の分圧点は1.125 V、つまり電源電圧の3/4になるようにします。また、電流計から見た直列抵抗は電圧振幅1.5/2 = 0.75 Vあたり100μAなので7500Ωでなければなりません。この直列抵抗はR1とR2の合成抵抗と電流計自身の内部抵抗を含みます。

R1とR2は並列にして7500Ωより低く、かといってあまり無駄な電流を流さない程度の抵抗にします。またR1とR2の比は1:3になるので、1kΩと3kΩにしました。これらの並列抵抗は750Ωです。また電流計の内部抵抗を測ると1900Ω程度でした。そうすると、R3は4850Ωになります。この抵抗値は5.1kΩに100kΩを並列にするとだいたい実現できます。

以上の回路をアルミケースなどに入れて電流計を取り付けるか、あるいは電流計の中に組み込むか考えましたが、作業は細かくなるものの組み込む方が加工が少なくて済みそうなので、チップトランジスタを使う小さい基板を設計しました。下の写真はLPKFの基板加工機で基板を削っているところ。

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こんな基板ができました。

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電流計は文字盤も変更する必要があるし、基板を入れる必要もあるので、一度分解します。

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文字盤をラベルシートに印刷し、アルミの文字盤を一旦取り外して裏返したところに貼り付け、再び取り付けました。

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電流計のケースにはトリマが露出するための孔をあけました。

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作った基板をケースに実装し、

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フロントカバーも元に戻しました。

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裏面はもともとの正負の入力端子を電源端子とし、新たに入力用の電線は別に取り付けました。

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ここで特性を調べてみると、どうも振幅が90%程度しか出ていません。これはどうやらアンプのゲインが無限大と仮定したのが無理だったようです。たしかにあまりにおおざっぱな仮定でした。そこでフィードバック抵抗を110kΩに変更すると、ほとんど予定通りになりました。この後9台同じ物を作りましたが、そのへんのゲインのばらつきがほとんどないのが面白いところです。トランジスタも1台だけ東芝のを使い、9台はロームのを使ったのですが、そういう違いは結果にほとんど影響しません。

どうやらCMOSライクなバイポーラインバータ回路(とくに1.5Vで使う場合)はとても再現性が高いというありがたい性質があります。鳩歩堂は広くいろんな回路をやるのでアナログIC設計者ほどトランジスタの特性を隅々まで知っている訳ではありません。とにかくニッチな目的にマッチした回路形式を見つけたなぁ、ラッキー♪と思うだけでそれ以上突っ込んで考える余裕は今のところありません。

ということで、たいした紆余曲折もなく、5班分10台が完成しました。なかなかの壮観です。

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こんなふうに使うことになります。

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