高速電流アンプ
ナノ構造物をTEM(透過電顕)で観察しながら高速に電流を計測するという課題に挑戦しているチームがあり、とりあえずエヌエフの電流アンプLI76を使おうとしたのですが、どうも位相補償が狂っているのか発振気味でうまくいきません。というわけで、TEMのフィードスルーに直結するアンプを作ってしまおうということになりました。
測定したのは10nAあたりの電流らしいです。微少電流アンプというのは測定したい電流に対して入力バイアス電流の十分に少ないオペアンプを使わないと作れません。ちなみに、現在のLI76の中身は知りませんが、昔は汎用オペアンプの前段に缶パッケージのデュアルFETが使われていました。現在ではふつうはバイアス電流が少ないMOSFETを入力の差動段に使ったオペアンプが使われます。
この分野のオペアンプもどんどん進化していますが、一般にはバイアス電流が非常に小さい製品は入力オフセット電圧は非常に低いというわけにいかないので、電流電圧変換抵抗(フィードバック抵抗)を大きくして、測定したい電流を電圧に変換した値に対して入力オフセット電圧が相対的に小さくなるように一気に増幅してしまおうという設計になりがちでした。それは反面、帯域を伸ばせないということになります。
で、最近のオペアンプ事情をアナデバの製品群から調べてみると、入力バイアス電流が200fAでオフセット電圧が10uV台のがありますね。しかもかなり速く、もしかして10MHz位の帯域が得られる?ということでAD8616を使うことにしました。ただし、このオペアンプは裸のゲインが40dBしかないようです。
で、こんな愚直な回路になりました。
初段はI-V変換抵抗10kΩにしました。これで10nA入ってくると100uVに変換されるので、入力オフセットより大きくなります。その後10倍ずつ3回増幅してます。
初段の入力に入っている100Ωはオペアンプの保護用のつもりです。電流電圧変換アンプなので、入力インピーダンスゼロが良いのですが、裸ゲインが100倍しかないとすると10kΩのフィードバック抵抗を使うと入力インピーダンスが100Ωまでしか下がりませんから、もう一つ100Ωの保護抵抗を付けてもいいでしょう。それに、ナノ構造物の方に保護抵抗1MΩが付いているというので、100Ωは無視できます。
なぜか帯域が1MHz位に留まってしまいました。なんでか、まだあんまりよく考えていませんが、とにかく使って貰おうと思います。
今回の特徴はこれ、アルミダイキャストのケース…
孔はステージドリルで開けてリーマーで調節しました。
アルミといっても鋳物のアルミは板金のように粘りません。サクサク削れました。これに軍隊色したMIL規格のコネクタを…
直接締め込みます。
くっつけてみたらケーブルクランプ…
のネジで基板が留められそうなので、金ノコで切ってしまいました。
これで基板を固定(まだ部品が実装してない状態で撮影)。
このオペアンプは±2.5Vという低い電圧で使うようです。電源は二次電圧6V+6Vのセンタータップ付きの小さい電源トラス(研究室に在庫があるので)を使い、電圧の余裕があるので3端子レギュレータで一旦±5Vに安定化してからLM317とLM337で±2.5Vに安定化しました。最近は3.3V以下の電源電圧が必要な場面が増えてきましたので、正電圧では性能の良いレギュレータICがたくさん出ていますが、負電圧のレギュレータICはあまり充実していませんね。
ちなみにLM317のデータシートによると、Typical applicationとして分圧回路に10mAも流れるような低い抵抗を使ってあります。LM337では20mAです。もっと高い抵抗にするとバイアス電流による誤差が増えはしますが、不安定化するとは書いてないようです。いままであまり気にもせずに1mA程度になるような抵抗を選んでいたような気がします。今回はまじめに、と途中まで思っていましたが、電源トランスの容量が±80mAなのに、分圧回路に10mAだ20mAだ流したくありませんから3.8mA程度になるように設計しました。
このケースはプラスチック製です。これもステージドリルでサクサク削れます。昔むかしは細いドリルで円周上に穴を開けてニッパーでつなげて半丸ヤスリで仕上げるという苦労がありましたね。道具が良くなると非常にはかどります。
そして完成です。
ああそうそう、今回は本体と電源の間が遠いので、トランスの漏れ磁束を減らす努力は全く必要ありません。普通のEI型コアのトランスを使うことができました。
測定したのは10nAあたりの電流らしいです。微少電流アンプというのは測定したい電流に対して入力バイアス電流の十分に少ないオペアンプを使わないと作れません。ちなみに、現在のLI76の中身は知りませんが、昔は汎用オペアンプの前段に缶パッケージのデュアルFETが使われていました。現在ではふつうはバイアス電流が少ないMOSFETを入力の差動段に使ったオペアンプが使われます。
この分野のオペアンプもどんどん進化していますが、一般にはバイアス電流が非常に小さい製品は入力オフセット電圧は非常に低いというわけにいかないので、電流電圧変換抵抗(フィードバック抵抗)を大きくして、測定したい電流を電圧に変換した値に対して入力オフセット電圧が相対的に小さくなるように一気に増幅してしまおうという設計になりがちでした。それは反面、帯域を伸ばせないということになります。
で、最近のオペアンプ事情をアナデバの製品群から調べてみると、入力バイアス電流が200fAでオフセット電圧が10uV台のがありますね。しかもかなり速く、もしかして10MHz位の帯域が得られる?ということでAD8616を使うことにしました。ただし、このオペアンプは裸のゲインが40dBしかないようです。
で、こんな愚直な回路になりました。
初段はI-V変換抵抗10kΩにしました。これで10nA入ってくると100uVに変換されるので、入力オフセットより大きくなります。その後10倍ずつ3回増幅してます。
初段の入力に入っている100Ωはオペアンプの保護用のつもりです。電流電圧変換アンプなので、入力インピーダンスゼロが良いのですが、裸ゲインが100倍しかないとすると10kΩのフィードバック抵抗を使うと入力インピーダンスが100Ωまでしか下がりませんから、もう一つ100Ωの保護抵抗を付けてもいいでしょう。それに、ナノ構造物の方に保護抵抗1MΩが付いているというので、100Ωは無視できます。
なぜか帯域が1MHz位に留まってしまいました。なんでか、まだあんまりよく考えていませんが、とにかく使って貰おうと思います。
今回の特徴はこれ、アルミダイキャストのケース…
孔はステージドリルで開けてリーマーで調節しました。
アルミといっても鋳物のアルミは板金のように粘りません。サクサク削れました。これに軍隊色したMIL規格のコネクタを…
直接締め込みます。
くっつけてみたらケーブルクランプ…
のネジで基板が留められそうなので、金ノコで切ってしまいました。
これで基板を固定(まだ部品が実装してない状態で撮影)。
このオペアンプは±2.5Vという低い電圧で使うようです。電源は二次電圧6V+6Vのセンタータップ付きの小さい電源トラス(研究室に在庫があるので)を使い、電圧の余裕があるので3端子レギュレータで一旦±5Vに安定化してからLM317とLM337で±2.5Vに安定化しました。最近は3.3V以下の電源電圧が必要な場面が増えてきましたので、正電圧では性能の良いレギュレータICがたくさん出ていますが、負電圧のレギュレータICはあまり充実していませんね。
ちなみにLM317のデータシートによると、Typical applicationとして分圧回路に10mAも流れるような低い抵抗を使ってあります。LM337では20mAです。もっと高い抵抗にするとバイアス電流による誤差が増えはしますが、不安定化するとは書いてないようです。いままであまり気にもせずに1mA程度になるような抵抗を選んでいたような気がします。今回はまじめに、と途中まで思っていましたが、電源トランスの容量が±80mAなのに、分圧回路に10mAだ20mAだ流したくありませんから3.8mA程度になるように設計しました。
このケースはプラスチック製です。これもステージドリルでサクサク削れます。昔むかしは細いドリルで円周上に穴を開けてニッパーでつなげて半丸ヤスリで仕上げるという苦労がありましたね。道具が良くなると非常にはかどります。
そして完成です。
ああそうそう、今回は本体と電源の間が遠いので、トランスの漏れ磁束を減らす努力は全く必要ありません。普通のEI型コアのトランスを使うことができました。
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