多相LC発振器

多相発振器の記事をさっき投稿したばかりですが、じつはここまで語らずにはやめられないネタがあります。
多相LC発振器とは、こんなものです。こんなものができてしまいました。

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★図中のコイルの定数39nHは39μHの間違いでした


実際作ってみました。何相でも実験できるように専用基板を作ったら、なんかマンダラみたい。反重力コイルとか言ってこんなの作ってる人がいたような気がするな。しかし鳩歩堂の話はまともな科学ですから安心して読んでくださいね。

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発振波形は3相交流です。

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複数のコイルでリングを作り、接続点からグランドに向けてコンデンサを接続します。グランドに接続しなくても発振するのですが、グランドに付けた方が波形が正弦波に近かったです。そして、それぞれの接続点にさらに接続されているのはバイポーラトランジスタによるCMOSもどき回路です。たぶんCMOSインバータでいいと思いますが、ICパッケージに6個入っているのを接続するよりディスクリートで作る方がこの場合は便利だったので。

LC発振器でありながら3相ということは、3個のコイルの電流は互いに干渉し合っているのはたしかですが、それぞれ120°違う位相の電流が流れてます。

この構造で何角形にでもできます。ですが、四角形にすると180°の繰り返しになるようです。

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こんどはシミュレーションです。0.001Ωは、これがないとシミュレータが途中で止まるので入れておきました。波形を見ると4相あるはずの波形が2つしか見えません。2つずつ重なっているようです。また、フィードバックする位置をお隣のインバータの出力ではなく対角の位置に変えると、2つの独立なLC発振器になってしまいます。リング状につながっているのにもかかわらず、です。

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発振波形の立ち上がりが2セットに分離しているのがわかります。発振が成長した後も位相が違っています。実際に作ってみると下の写真のようなことになりました。周波数自体が異なる2つの発振器になっているのが分かります。

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下側の波形でトリガーをかけているため、上側の波形は流れています。逆に上側の波形でトリガーをかければこのとおり。

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コイルがリング状にくっついているにもかかわらず、2つの発振器が完全に直交(文字通りですが)しています。多少の干渉があれば止まっている方の波形も太く見えそうなものですが、そんなこともないので、ほとんど干渉がないようです。逆に流れている方の波形が振幅方向に少し振れているのが干渉といえば干渉かも知れません。

ところが、4個のLまたはCの1箇所の値を倍とか半分に変えてみる(つまり部品を2個パラにしてみる)と、対称性が崩れて2個の発振器が同期します。

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では5角形ではどうでしょう。5角形でもフィードバック信号をもらえる場所が2箇所あります。どっちからもらっても5相発振器になりますが、最初の例では正5角形の頂点を順々に辿ります。

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お隣からフィードバック信号をもらうと、星形に頂点を辿ります。

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では6角形ではどうでしょう。3種類できそうですが、そのうち2種類やってみました。まずはまともな方。

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6相発振器になっています。正反対からフィードバックすると、こんどは3個の独立な発振器にはならず、波形が歪みました。

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しかし、この偶数角形で正反対からフィードバックした場合は、四角形から想像するに、3個の独立な発振器になる場合もあるかもしれませんね。また、上のまともだった方にしても、2個の独立な三角形にならないとも限らない気がします。

さて、では逆に2角形ではどうでしょうか。2角形でも発振します。

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この回路、インバータを片方だけにするとCMOS水晶発振回路でひじょうになじみのある回路です。ご存じ無い方も多いと思いますが水晶のかわりコイルを使えば発振回路になります。じつは反対向きのインバータを取り付けることができたのでした。全く考えたこともありませんでした。

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上の波形はコイルの両端の電圧です。インバータを片方だけにすると、かえって波形がキレイになりました。まあこれはゲインが大きすぎるとかえってQが下がるということで、必ずしも2角形LC発振器が良くないということにはなりません。

さて、2角形LC発振器のインバータが片方しかないのがCMOS水晶発振器の回路ですが、上のトランジスタのエミッタ(CMOSならPチャネルMOSのソース)と下のトランジスタのエミッタ(CMOSならNチャネルMOSのソース)はAC的にみたらどちらも接地されています。ですから、片方を省略してDCバイアスも省略してみると、これは紛う事なきコルピッツ発振器ですね。

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シングルのLC発振回路が多い世の中ですけれど、CMOSを使うと上下のプッシュプルになりますし、Lの両側にトランジスタを配置すると水平のプッシュプルになります。そして、2角形LC発振器はブリッジ駆動ということになります。

ちなみに、もともとプッシュプル回路というのは真空管時代からあるのですが、真空管にはP型とかN型、あるいはPNPとNPNというのはなく、いわば全部N型です。それは陽電子でも飛ばさないとP型ができないからです。それなので、真空管でプッシュプル出力というのはセンタータップ付きのトランスのセンターから給電して両サイドの真空管に交互に電流を流すということになります。水平方向の(左右の)プッシュプルと言えます。

半導体素子が登場してから、P型とN型、またはPNP型とNPN型の素子を電圧的に上下に組み合わせてトランスが不要な出力回路(スピーカーを鳴らすための出力回路)ができました。これをアウトプットトランスフォーマーレスということでOTL方式などと呼びました。しかし、これも上下のプッシュプルと言えます。図中にトーテムポールとも書きましたが、これはもしかすると正しい表現じゃ無いかも知れません。NPNを上下に積んだような場合に使う場合が多い用語だと思います。

そして、上下のプッシュプルと左右のプッシュプルの両方を兼ね備えた回路がブリッジ出力回路ですね。カーオーディオの出力段にはよく使われます。というのは、電源電圧に制約があるので、ブリッジにしてやればスピーカーにAC電圧が2倍掛けられてでかい音が出るというわけです。

脱線してしまいました。話を元に戻して終わりにします。

コルピッツみたいな発振回路があって、それがLC発振回路の世界の全部だと思っちゃいけない、プッシュプルまで視野に入れてようやく全体が見えるんだ、と先週までは思っていました。そして、酒の熟成促進装置などでプッシュプル発振器の安定さを強調してきました。

ところが、ブリッジ発振器という世界もあるんだということに、改めて気が付きました。実はブリッジ発振器というものも世の中に存在することは知っていました。たとえば200Vの受電設備しか無い場合に、非常に大きいパワーの誘導加熱装置を作ろうとすると電源電圧が足りなくなり、プッシュプルではなくブリッジにして2倍の電圧をかけたいということがあるのです。カーオーディオと同じように。ですから「改めて」気が付いたというのです。というのは、ブリッジLC発振器はさらに多角形発振器の最小の形態なんじゃないかということも見えてきたからです。例えて言うと、普通の数字が1×1行列と見なすこともできることを発見したみたいな感じです。

☆後で考えたのですが、2角形というのはコイルが2個あって然るべきですね。しかし2個のコイルが並列になっているだけなので、値が半分になるということはありますが、回路図的には1個でいいわけです。では、1角形というのはないのかというと、これがインバータが1個の場合なのかな、という気もします。

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