電圧リミッター
PICONの改良版を作るにあたり、出力電圧のリミッターを付けることにしました。アジレントテクノロジーのシグナルジェネレータ(SG)のAMやFM変調入力はたしか2V(1Vだったかも)を超えるとオーバーロードの表示が点灯します。ローデシュワルツのはもっとひどくて、上限を超えたら表示点灯ではなく異常停止します。ローデシュワルツのは非常に使いにくいです。というわけで、SGの変調に使うPICONは出力電圧制限を付けようというわけです。けっこう良い回路ができたので紹介しながら自分のためにもまとめておきます。
参考にしたのが、「精選アナログ実用回路集」稲葉保著。便利な本なのですが回路図の一覧性が悪いです。1ページに収めるためなのでしょうか。そこでわかりやすく描き直してみました。
本は職場に置いてきたので記憶で描きました。出力部のオペアンプに付いているコンデンサの容量はうろ覚えです。
さて、この回路は出力電圧に正負別々の電圧制限を付けることができますが、動作を理解するため正の制限だけ考えてみます。そのための図がこれ。
OP1には入力電圧Aと制限電圧Bが入っていますが、説明の都合でA+Bという電圧が入力されている等価回路に置き換えます。
A+Bが正の時は下側のダイオードが導通し、負の時は上側のダイオードが導通します。その結果、D点の電圧は入力電圧Aが制限電圧Bを超えた部分だけを切り出した波形になります。この波形を元のAから引くと、Eのように制限電圧より上が切れた波形になります。入力を反転したうえで正の側を制限したという意味になります。
このとき、Cの電圧はDの電圧よりもダイオードの閾電圧2個分余計に振れています。理想的にはオペアンプの出力が閾電圧2個分の電圧を時間ゼロで変化しなければ、この回路はちゃんと動作しません。しかしオペアンプの出力電圧はスルーレート以上の速さでは変化しませんから、実際には次のような波形になります。
制限が始まるところで少し制限電圧を超えてしまいます。これを完全に無くすることはこの方式では不可能ですが、小さくすることはできます。スルーレートの大きいオペアンプを使うことと、閾電圧の小さいダイオードを使うことが有効です。ですから、ショットキーバリアダイオードやゲルマニウムダイオードを使う方が、シリコンPN接合ダイオードを使うよりも良い特性をもたらします。
ただし、ショットキーダイオードにしても、ゲルマニウムダイオードにしても、逆バイアス時のリーク電流が無視できない(あるいは信じられないくらい大きい)ものがありますので要注意。シリコンPN接合ダイオードにくらべ、ショットキーダイオードは品種による個性がかなり強いです。ゲルマニウムダイオードはたぶん現在は1種類くらいしか手に入らないと思いますし、その1種類の漏れ電流が大きいのでまず使えません。
それから、OP1を通る信号はいくらか位相が遅れます。そうすると、結果として出力電圧の制限値が水平ではなく徐々に下がるような波形になります。次の図のような位置に位相を補償するコンデンサを入れると水平に近づけることができます。
完成したのが次の回路です。
制限が作動したらLEDを点灯させる回路を付加しました。コンパレータでOP1とOP2の出力電圧をチェックしてLEDを点灯させます。コンパレータと書きましたが、実際にはCMOSオペアンプのAD822を使うことにしました。コンパレータは入力部の差動増幅器がバランスしてない状態で使われるため、入力差動電圧によって入力インピーダンスが変化し、検出対象であるOP1とOP2の出力電圧にノンリニアな歪みを与えるようです。バイポーラトランジスタ入力のオペアンプやコンパレータは実際に歪みを発生させました。CMOS入力オペアンプはそのようなことがありませんでした。CMOS入力の適当なコンパレータを探しよりも、いつも使っているCMOSオペアンプを流用する方が便利なので、AD822を使うことにしました。
さて、ところで、下のような回路によっても制限が作動したことを示すLEDを点灯させることができます。ただし、ショットキーダイオードを使うことができません。
LEDの電流はOP1またはOP2が供給します。この回路はシリコントランジスタのエミッタ-ベース間の接合をダイオードの代わりに使っていますが、シリコンPN接合ダイオードと全く同じ性能を示します。LEDを外してみても波形の変化はほとんどありません。リミッターとしての性能がそこそこで構わない場合には、この回路の方が部品が少なくて経済的だと思います。
参考にしたのが、「精選アナログ実用回路集」稲葉保著。便利な本なのですが回路図の一覧性が悪いです。1ページに収めるためなのでしょうか。そこでわかりやすく描き直してみました。
本は職場に置いてきたので記憶で描きました。出力部のオペアンプに付いているコンデンサの容量はうろ覚えです。
さて、この回路は出力電圧に正負別々の電圧制限を付けることができますが、動作を理解するため正の制限だけ考えてみます。そのための図がこれ。
OP1には入力電圧Aと制限電圧Bが入っていますが、説明の都合でA+Bという電圧が入力されている等価回路に置き換えます。
A+Bが正の時は下側のダイオードが導通し、負の時は上側のダイオードが導通します。その結果、D点の電圧は入力電圧Aが制限電圧Bを超えた部分だけを切り出した波形になります。この波形を元のAから引くと、Eのように制限電圧より上が切れた波形になります。入力を反転したうえで正の側を制限したという意味になります。
このとき、Cの電圧はDの電圧よりもダイオードの閾電圧2個分余計に振れています。理想的にはオペアンプの出力が閾電圧2個分の電圧を時間ゼロで変化しなければ、この回路はちゃんと動作しません。しかしオペアンプの出力電圧はスルーレート以上の速さでは変化しませんから、実際には次のような波形になります。
制限が始まるところで少し制限電圧を超えてしまいます。これを完全に無くすることはこの方式では不可能ですが、小さくすることはできます。スルーレートの大きいオペアンプを使うことと、閾電圧の小さいダイオードを使うことが有効です。ですから、ショットキーバリアダイオードやゲルマニウムダイオードを使う方が、シリコンPN接合ダイオードを使うよりも良い特性をもたらします。
ただし、ショットキーダイオードにしても、ゲルマニウムダイオードにしても、逆バイアス時のリーク電流が無視できない(あるいは信じられないくらい大きい)ものがありますので要注意。シリコンPN接合ダイオードにくらべ、ショットキーダイオードは品種による個性がかなり強いです。ゲルマニウムダイオードはたぶん現在は1種類くらいしか手に入らないと思いますし、その1種類の漏れ電流が大きいのでまず使えません。
それから、OP1を通る信号はいくらか位相が遅れます。そうすると、結果として出力電圧の制限値が水平ではなく徐々に下がるような波形になります。次の図のような位置に位相を補償するコンデンサを入れると水平に近づけることができます。
完成したのが次の回路です。
制限が作動したらLEDを点灯させる回路を付加しました。コンパレータでOP1とOP2の出力電圧をチェックしてLEDを点灯させます。コンパレータと書きましたが、実際にはCMOSオペアンプのAD822を使うことにしました。コンパレータは入力部の差動増幅器がバランスしてない状態で使われるため、入力差動電圧によって入力インピーダンスが変化し、検出対象であるOP1とOP2の出力電圧にノンリニアな歪みを与えるようです。バイポーラトランジスタ入力のオペアンプやコンパレータは実際に歪みを発生させました。CMOS入力オペアンプはそのようなことがありませんでした。CMOS入力の適当なコンパレータを探しよりも、いつも使っているCMOSオペアンプを流用する方が便利なので、AD822を使うことにしました。
さて、ところで、下のような回路によっても制限が作動したことを示すLEDを点灯させることができます。ただし、ショットキーダイオードを使うことができません。
LEDの電流はOP1またはOP2が供給します。この回路はシリコントランジスタのエミッタ-ベース間の接合をダイオードの代わりに使っていますが、シリコンPN接合ダイオードと全く同じ性能を示します。LEDを外してみても波形の変化はほとんどありません。リミッターとしての性能がそこそこで構わない場合には、この回路の方が部品が少なくて経済的だと思います。
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