ツェナーダイオード式電圧リミッター(OPA111の代替品選定)

先日、電圧リミッターについて書きましたが、単純な電圧リミッターはダイオードかツェナーダイオードを使って作ることができます。以前のノートを見ていたら面白い記録があったので記事にしてみます。

ZeeKon4Aの組み立てについて書いたことがあります。ノートの記録はその中で使われているアナログ積分器に関連して検討した内容です。

ZeeKon4Aというのは鳩歩堂オリジナルのSPM(走査プローブ顕微鏡)向けPI制御器です。その積分要素はアナログ積分器で、制御を止めてZ軸の位置(サンプルとtipの距離)を保持したいときは積分器の入力をリレーで切り離し、積分容量に蓄えられている電圧が変化しないようにします。下の回路図を見てください。

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PI制御器なので積分器にはエラー信号が入力されます。エラー信号をポテンショメータでアッテネートしてから入力することで積分時定数を変化させることができます。時定数レンジが合わないときは積分容量を切り替えることもできます。左側のフォトカプラ8個は、積分器の入力抵抗を切り替えるためのものですが、これはZeeKonの最終段に付いている高電圧アンプのゲインを切り替えたときにループ全体の時定数が変わらないようにするため、高電圧アンプのゲインの逆数になるように入力抵抗を切り替えるものです。

高周波リレーが使ってあります。なぜ高周波用を使うかというと、信号通路が50Ωになるようにシールドされているからです。リレーが動作するときには接点が変位します。そのとき、周囲にある電界の中で移動することになるので、変位電流が流れ、リレーを動作させた瞬間に積分電圧が少し変化することがあります。それを防ぐためシールド付きのリレーを使います。ですからここでは高周波インぺーダンスが50Ωになっていることではなく、DCでシールドされていることが役に立っています。

以前はリーク電流の少なさに期待してリードリレーを使っていました。しかし、このリレーを動作させる目的はPI制御を停止してSPMのtip位置を保持するためなのに、保持動作の瞬間に制御電圧が変化してしまうという現象が起こって、たいへん不評を買ったことがありました。現在は高周波リレーに変更しましたので、この問題はほぼ解消しました。

さて、使用するオペアンプに求められるもっとも重要な要件は、入力バイアス電流が非常に小さいことです。そうでないとリレーを開いている間に積分電圧が変化してしまいます。

バーブラウン(いまはテキサスの一部門)の製品で、OPA111という非常にバイアス電流の小さいオペアンプがありました。その後さらにバイアス電流が小さいOPA128というのが出ました。どちらもメタルカンパッケージの高級品でした。カンも含めてガードリングにすることができるので、パッケージの表面を伝う漏れ電流を極限まで減らすことができます。

というものの、実際には高級品はカンパッケージという習慣に従っただけというのが実情だったと思います。パッケージ表面が相当に汚れていない限りプラスチックでも十分です。というわけで、OPA124とかOPA129などのプラスチックパッケージ品に置き換えられてしまいました。

さて、何が問題かというと、制御がちゃんとかかっているときはいいのですが、たとえばtip-サンプル間距離が遠すぎるときはZ軸のピエゾを最大限伸ばしても、たとえばFM-AFMなら発振周波数が目標値に届きません。最大限伸ばすと言いましたが、それは積分器の出力電圧が飽和しているということです。そして、問題は積分器のオペアンプが飽和から復帰して正常動作に戻るとき、OPA111はすぐに戻るのですが、OPA128はかなり長い時間かかったのです。ですから、前作のZeeKon4まではわざわざ古い製品であるOPA111を購入して使っていました。ところが、ここに来てOPA124かOPA129に置き換えざるを得ない状況になってきました。

そこでOPA124とOPA129をテストしましたが、どちらも飽和からの復帰の遅延があり、そのままでは使いたくありませんでした。下の図はOPA124をテストしたときのノートから起こした図です。

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要点しか記録してないので信号の振幅や電源電圧はわかりませんが、方形波を入力し、積分器が上下に飽和するようにしたとき、飽和から回復するのに約0.1msかかり、更に下側に飽和したときは回復する前に少し電圧が下がります。このような遅れや制御が掛かっていないにもかかわらずtip-サンプル間距離を変化させるような電圧変化は極力避けなければなりません。OPA129でも大同小異だったとノートに記載されています。

このような遅れなどのへんな現象が起こるのは、オペアンプの入力部の差動増幅器がバランスしていない状態にするからです。オペアンプの設計者はそんな状態で使うことを考慮していないでしょうから、OPA111がたまたまそういう現象を起こさなかったのも、その後の型がみんな起こすのも文句の言いようがありません。昔の定番オペアンプuA741なんかは入力作動電圧が大きくなると出力電圧が反転するというもっと酷い現象がありましたから、OPA124などは十分配慮されていると言えるかも知れません。

作動ペアを飽和させないためには、出力電圧が電源電圧でリミットされる前にツェナーダイオードでリミットしてやればいいわけです。正負にリミットするには逆直列にします。

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正負で違う電圧のツェナーダイオードを使うこともできます。逆に正負ともまったく同じ電圧でリミットしたい場合はこういう回路も知られています。

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ZeeKon4Aの回路では入力抵抗がかなり広い範囲で変化しますので、ツェナーダイオードに流れる電流によって電圧降下がどのくらい変化するか、つまり定電圧特性の善し悪しが問題になります。手持ちの5.1Vのツェナーダイオードで実験してみました。リミット電圧は約10Vを目指すことにし、左右とも2個ずつ直列にして使いました。

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結果は入力抵抗Rが100kΩの場合と10MΩの場合でリミット電圧が全然違うという結果でした。9Vのツェナーダイオードを使うと(ただし4個ではなく2個逆直列)Rが100kΩの場合と10MΩの場合のリミット電圧の差がほとんどなくなりました。

ここまで実験してから、というのはツェナーダイオードのデータシートをマジマジと見たことが無かったからなのですが、いちいち実験しなくても特性曲線を見れば何Vのツェナーを使うのが良いか分かるはずだと気が付きました。次の図はロームのデータシートからいただいたものです。

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ツェナー電圧9Vあたりから低電流側の定電圧特性が良くなってきて、10Vあたりでは電流が5桁変わってもほとんど電圧変化がなくなります。12Vあたりから少し大電流領域でツェナー電圧が上昇する傾向になってきます。そういうわけで、10V程度のリミッターを作るにはちょうどツェナーダイオードの定電圧特性が最高の領域が使えることがわかりました。

積分器のリミッターに使うツェナーダイオードにはもう一つ重要な特性があります。逆電流です。コンデンサに蓄えられるはずの電荷がツェナーダイオードの逆電流としてリークすると、Rの違いによってやはりリミット電圧の差が生じると考えられます。下の表もロームのデータシートから頂きました。

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具合の良いことに、ツェナー電圧7Vあたりから逆電流が減ってきます。実験に使った5.1Vのツェナーダイオードの逆電流に較べるとなんと1/20程度になっています。

こういう観点から見ると5Vあたりのツェナーダイオードは相当性能が悪いようですが、ツェナー電圧の温度係数は5Vから6Vの間でゼロになるところがあるそうですよ。



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