摩擦スピーカー

先日秋葉原にHDDを買いに行ったら開店間もないのにレジに数人が並んでいました。とても暑い日で、鳩歩堂の前に並んでいたおたくっぽい青年のポロシャツの背中も汗でぐっしょりと濡れています。彼は100円だかの商品をカードで払ったので店員はイライラするし、後ろに並んでいる鳩歩堂もイライラしました。後ろから睨んだって何が変わる訳でもないのですが、ポロシャツの背中をジッと睨んでいたら、縦に一本、太く縮れた毛がくっついていたのに気が付いた。

うーん、なんだか若いと言うことは痛いことだな。

アパートの部屋で明け方までゲームをし、そのまま寝ころんで少し眠り、今日は早い時間に買い物を済ませるため気合いを入れて出てきたのは良いが、狭く散らかった部屋に落ちていたインモーが背中にくっついたまま出てきてしまったのかも知れない。などと余計な想像をしているうちに、自分があの年頃だった頃の服装、振る舞いを思い出して、あ痛たたたた!そういえば今回のお題に関連して恥ずかしい経験があったっけ。

というか、恥ずかしい経験を思い出したおかげで、良いネタを思い出しました。今回は摩擦スピーカーのお話です。動摩擦係数が音声の電圧で変化する現象があるのです。それを使うと面白いスピーカーの実験ができます。この珍現象発見の経緯についてはいろいろ喋りたいのですが後回しにして、どういう実験か画像で紹介します。

まず、丈夫な段ボールの板を用意します。その一端にステンレス箔のテープを貼ります。このテープに電線を接続しておきます。

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テープの上をクラフト紙などの丈夫な紙でカバーします。

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一方、ステンレス製の鏡面になっているプレート(下の写真はステンレス製のトレイ)を用意し、電線をテープか何かで接続します。

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プレートに付けた電線と、さっきの段ボールのステンレス箔に付けた電線を、オーディオアンプのスピーカ端子に接続します。ステンレス箔をカバーしている紙を薄めた界面活性剤で濡らします。界面活性剤というと入手が難しそうですが、マジックリンとかバスマジックリンなどを5倍くらいに薄めたものがお勧めです。

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段ボール板でステンレスプレートを擦ります。そうすると、段ボール板からスピーカのように音が聞こえてきます。



この現象は次のように説明できます。まず、紙とステンレスプレートの間の動摩擦係数が音声電圧によって増えたり減ったりします。摩擦が減ると段ボールは加速し、摩擦が増えると段ボールは減速しますが、それが音声信号によって起こるので、段ボールの移動速度が音声信号で変調されます。その結果、段ボールの運動は一定速度の並進と音声振動を合成したものになります。つまり、段ボールが振動板になって音声が放射されるのです。

では、なぜ動摩擦係数が電気で変化するのか、という点は、鳩歩堂には未だにわかりませんが、界面活性剤の親水基が持つ電荷が関係しているだろうということくらいは想像できます。上記の紙と界面活性剤の代わりに、イオン交換濾紙と純水を用いても同じ現象が観察されます。また、その際に、陽イオン交換タイプと陰イオン交換タイプでは、電圧の極性と摩擦係数の関係が逆になることも実験で確認してあります。

「摩擦係数が電圧で変わるというよりも、静電引力によって荷重が変化するからだよ」と思う人も居るでしょう。鳩歩堂もそれを考えたことがありますが、もしそうだとすると、印加電圧の正負にかかわらず引力しか生じないため、音はちゃんと再生されません。

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つまり上図の(a)の場合ですね。この場合でも、音声信号にDCバイアスをかければ動作点が横にずれるので印加電圧の正負によって摩擦が増減するようになます。この話をしたら親父の知り合いの方が昔の(戦前のかも知れない)本に摩擦を利用するスピーカが載っているといって教えてくれました。うろ覚えですが、こんなものだったと思います。DCバイアスが付いていたのは間違いありません。

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界面活性剤の場合に、ミクロに(ナノレベルで)見て垂直荷重が変化しているという確証はありませんが、もしそうだとすれば、摩擦と電圧の二乗カーブをはじめから電圧方向にシフトさせる作用があるのかも知れません。

なお、ステンレスプレートを使っている理由は、錆びにくいから。とは言え電圧をかけると徐々に錆びるので、ときどき磨く必要があります。他の金属でも摩擦スピーカー現象は発生しますが、アルミはすぐ腐食するのでダメです。銅はどうだったかな?なんらかの理由であまり適してなかったと思います。やっぱり錆びたような気がしますね。ステンレスに金メッキした表面は磨かなくても良いので最高です。

ではなぜこの現象を見つけたかについて。
学生時代にエレクトレットをマイクロアクチュエータに使う研究をしようと思ったことがありました。もっとも手頃に入手できるエレクトレットといえばエレクトレットコンデンサマイクなので、秋葉原でいくつか買ってきて、その頃住んでいたボロアパートでエレクトレットのダイヤフラムを取り出し、ファンクションジェネレータで駆動して音が出るか確認しようとしました。

結論から言うと耳に聞こえるほどの振幅は出ていませんでした。しかしその時は期待に反して音がしないので、耳の穴に突っ込まんばかりに近づけて音を聞き取ろうとしました。すると、たまに非常に短時間だけ小さい音がすることがあり、よく調べると、電極が耳たぶなどにこすれるときだけ音がすることがわかりました。皮膚に触れていても動いていないと音がしないこともわかりました。あとでわかったのですが、ボロアパートの畳が湿気ていたせいで、人体がアースに弱く接続されていたようで、そうでなかったら電極が片方触っても音がしなかったはずです。

さて、そんな現象があることが分かったら人体でなくても同じ現象が起こるのか実験してみたくなります。その結果、人体でなくとも濡れた摩擦面に交流電圧が掛かっている時、摩擦面を動かすと音がすることがあるといういことがわかりました。人体の次にやったのはティッシュを唾で濡らしたものだったと思います。その後自宅にあった食塩、サンポール、石けん、洗剤など試していくと、洗剤類においてこの現象が強く表れることがわかりました。

ところで、昔NHK出版から出ていたエレクトロニクスライフという雑誌がありました。その雑誌に摩擦スピーカーの実験について投稿したことがあります。上記のことはだいたいその記事にも書いてありますが、何年何月号ということは忘れてしまいました。

記事の中に実験風景という写真を載せましょうということになりました。畳の上に大きい段ボール箱(振動の方向からいって邪道なのですが低音が響くので箱の上でやると気分が良いのです)を置き、その上にステンレス板を敷いて、膝をついた若い日の鳩歩堂がその上を段ボールの板で擦っている姿が載っているはずです。三脚を使ってタイマー撮影したものです。

で、なんで後になって気が付いたのか忘れてしまったのですが、使用されたのと同じ写真のプリントを見ると、ズボンのチャックがあいていてるのです。ところが誌面ではパンツは見えていません。当時のことですから銀塩フィルムで撮影し、現像前のフィルムのまま渡したのか、現像してプリント前に渡したのかだったと思います。黒っぽいズボンだったので、アンダー気味に焼き付けてマジックか何かでパンツのところを塗りつぶしてくれたんだろうと思います。

そのころ鳩歩堂もボロアパートに住んでいて、伸びきったようなTシャツを着て秋葉原を散策したりしていたわけですが、今思えばあの青年よりもずっと格好悪い服装をしていたような気がします。幸い黒っぽい服を着ていた場合が多かったので、インモーが付いていても気づかれにくかったかも知れませんが、白いブリーフは目立ったことだと思います。その頃はパンツといえばブリーフ、ブリーフといえば白だと思ってましたから。

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