ワンボタン555

ピエゾウォーカーのドライバについてはここにも書きましたが、研究室であっちこっちに使われるので、今までいろんなバージョンを作ってきました。

現在の主力機は「アプロチン」という装置。エナジードリンクのようなへんな名前ですね。
更に以前にはZ軸位置決めをぴたりと決めるという意味で「ジャスピタンZ」というのもありましたが廃盤になり、ドリンク系の命名は踏襲しました。アプローチするからアプロチンです。

初号機がアプロチンD、次がアプロチンスパイカー、次がアプロチンスパイダー(改名してサンボタンに)。下の写真はサンボタン2号。撮影位置が寄りすぎですな。
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これらはCPLDでディジタル的にランプ波形(ノコギリ波形)を作ってDACでアナログに変換しています。CPLDの内部はDDSの位相発生部と同じです。加算器があり、片方の入力は定数、他方の入力は加算器自身の出力をレジスタで1クロック遅延したものです。加算器出力はクロックパルス毎に与えられた定数ずつ直線状に増加します。加算器出力およびレジスタ幅いっぱいになるとゼロに回り込みます。与える定数がランプ波の傾きと周波数を決めます。

DDSではこのランプ波を位相と見なして正弦波に変換しますが、アプロチンではそのまま使います。

その波形は乗算型DACで振幅が決められ、極性切り替えアンプを通ってノブコンアンプと同じアンプで増幅され、同じように立ち下がりではMOSFETでシャントされます。シャントするタイミングはCPLDで作っているので、ノブコンアンプのような立ち下がり検出回路はありません。

ちなみに極性切り替えアンプは下図の(a)。

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ノブコンの中にも使われてます。V1が正電圧だけならスイッチ部分はNPNトランジスタかNチャネルMOSでもOKです。同様にV1が負電圧だけならPNPかPチャネルMOSでOK。この回路を(b)のようにすると無段階で反転から非反転まで調節できます。可変抵抗の部分をRとCの微分または積分にすると180度移相器(オールパスフィルタ)になるという、知って得する回路です。

話が脱線してきましたが、本筋に戻します。

上で言った「ゼロに回り込みます」という部分が曲者なのです。回り込む直前は加算回路幅の最大値とは限らず、回り込んだ後はゼロとは限りません。時間軸ではジッタも生じています。ですから、DDSで方形波を作ろうとすると、わざわざ正弦波をアナログフィルタでスムーズにしてから高速コンパレータに入力して方形波に戻すという面倒なことをします。アプロチンはCPLDまで持ち出したのにそんなジッタがあってあまり気分が良くないから、ノブコンと同様にLMC555と定電流源に戻そうというのが今回の趣旨です。

それが最新のワンボタンです。変な名前ですが、そもそもサンボタンというのは次のような由来があります。

ピエゾウォーカーには剪断ピエゾ1枚というものもありますが、たいていは3個か4個の剪断ピエゾが貼ってあって、それぞれがひとつずつの足になっています。ランプ波形の立ち下がりでは全部の足を同時に動かしても、慣性力のために足の裏が滑ってくれるのでウォーカーは移動します(というかそれが基本の考え方です)。しかしたとえば4本の足が全部剪断変形しているとき、1本だけを元に戻し、次にまた1本だけを戻し、という動作をすれば、3本の足の静止摩擦より1本の足の静止摩擦の方が小さいので、慣性力に期待しなくても(つまり立ち下がりが十分素早くなくても)ウォーカーが進むだろうというわけです。その予備実験を卒業したN君が3個の押しボタンスイッチでやったのでした。それにちなんでサンボタンなのです。

ところが、この方式は利点より欠点が多かった。なんと言っても配線が多くなってたまりません。そんなわけで、サンボタンは2台作っただけでした。アンプまでは共通ですが、ランプ波形が最大値になったらフォトMOSリレーでそれぞれのピエゾを切り離し、順次シャントしていきます。このとき、上述したジッタがあるため、「ランプ波形が最大値になったら」の部分も所詮つじつま合わせ的なロジックにならざるを得ません。

そんなんで、サンボタンである必然性がなくなったので、1回路に戻しました。1回路ということはボタンが1個相当なのでワンボタンになります。

今回作ったドライバーでは周波数を直接決めているのはマイコンからのリトリガパルスの周波数で、ランプの傾きはそれに併せて別のDACがLMC555のキャパシタの充電電流を通して決定しています。リトリガパルスの周波数はマイコン内蔵のタイマが決めるので、どんな周波数でもかなり高い精度で細かく設定できます。

さて、ピエゾ素子をワンボタンで駆動するときにはピエゾ素子から駆動周波数の音が出ます。周波数を細かく設定できる特徴を生かし、音階を奏でるように作ってみました。指定してやれば琉球音階になったりハワイアン音階になったりします。


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