カンチレバー拡大モデル



ピコピコ鳴って振動しているステンレスの定規。
先端には下側がN極になるように磁石が取り付けてあります。その磁石を、板の上に並べた磁石のS極に近づけると振動の周波数が下がり、N極に近づけると周波数が上がります。これはなんなのか、説明するにはちょっと準備がいります。

鳩歩堂が本業として研究しているのは原子間力顕微鏡(atomic force microscope, AFM)、電子顕微鏡でもなく原子力でもなく、原子間力顕微鏡です。その原理は追々紹介したいと思いますが、ごく簡単に説明しておきましょう。(専門の方で作り方に興味がある方は下の方までスキップしてください)

光学顕微鏡は物体から反射してきたり透過してきた光をレンズで「結像」させます。どこにさせるかというと、人間の目の網膜だったり、カメラのフィルム(今はあまり使われてませんね)だったり、CCDだったりします。光学顕微鏡は「目で見る」という行為の可能性を微少な方に拡げてくれるのです。電子顕微鏡は光の代わりに電子を使いますが、広い意味で「目で見る」のに似ています。

原子間力顕微鏡は走査プローブ顕微鏡という仲間の一員です。顕微鏡と名が付いていますが、この仲間は目で見るのではなく、「指先で触ってみる」のに似ています。対象物を指先で触ってみると、出っ張りや凹みがあるのがわかります。そのでこぼこを正確に記録して絵に再現することができれば、対象物の拡大図が完成するはずです。指のかわりに舌でなめて味を記録すれば、どの地点が甘いとか酸っぱいとかいう地図が、原理的には、できるはずです。指先が凹凸を、舌先が味を感じるように、走査プローブ顕微鏡はいろんなセンサーでトンネル電流や原子間に働く力などを検出します。センサーを動かす(走査する、スキャンする)サイズはミクロン(1/1000ミリ)とかそれ以下のとても狭い領域です。センサーを動かしたり最後に絵や地図を完成させるところまでコンピュータの助けを借ります。

原子間力顕微鏡は超高感度の力センサーを使います。冒頭の動画は力センサーの原理を示す拡大モデルだったののです。
画像
モデルは長さ30センチの定規ですが、実際は長さ0.1ミリくらいの板バネを使います。カンチレバーと呼ばれています。実際のカンチレバーの先端には非常に尖った針がついていて、その針先にかかる力を測るためにカンチレバーを使います。針に引力や斥力がかかるとカンチレバーは下や上に反りますから、反りから力を知ることもできますが、もっと感度が高い方法があります。それは冒頭の動画のように、引力か斥力かによって生じる振動の周波数変化を通じて測る方法です。
カンチレバーの振動周波数は、カンチレバーの弾性力と質量によって決まり、弾性力が強いほど周波数が上がります。カンチレバーが下がるほど上向きに押し返そうとする力(斥力)が掛かったとすれば、カンチレバーが本来持っている弾性力を助けることになり、振動周波数が上がります。逆に、カンチレバーの先端が下がるほどもっと引き下げようとする力(引力)が掛かったとすれば、この力はカンチレバーが本来持っている弾性力の作用を弱めるので、周波数が下がります。
このような原理を利用している原子間力顕微鏡は周波数変調式原子間力顕微鏡(FM-AFM)と呼ばれ、試料表面に並んでいる原子ひとつひとつが見分けられるほどの分解能を示します。

さて作り方。
画像
定規の根本に圧電サウンダーを接着し曲げセンサとして利用します。圧電サウンダーは電圧をかけると反り方が変わるモノモルフ構造になっているので、逆に使えば反りによって電荷が生じるセンサになります。その信号を増幅して空心コイルに電流を流し、定規の裏側に貼り付けてあるネオジム磁石を引っ張ることで自励振動を起こします。

画像
センサの電圧は高インピーダンスで受ければバイポーラトランジスタのしきい電圧くらいは楽に超えますので、ベースのバイアス回路は省略しています。ですから、手でスタートしてやらないと振動がスタートしません。100kΩと0.022uFで軽くローパスフィルタをかけて(というのはかなり高次の振動も起きてしまうため)、3段インバーテッドダーリントン回路で十分飽和するまで増幅してからコイルに与えます。ダイオードやトランジスタはなんでもいいようなものですが、出力段のトランジスタの電流容量に気をつけてください。入力段に逆パラになっているダイオードがないと、入力段のトランジスタのベース-エミッタ間の整流作用とピエゾ素子自信の容量によってピエゾ素子のDCレベルが下にシフトしてしまい、数回振動しただけで検出ができなくなってしまいます。最終段のトランジスタのベースに100Ω程度の抵抗を入れてください。ベース電流が流れすぎて壊れる危険があります。2010年6月の研究所一般公開のために整備していて気が付きました。なんでこんなミスを犯したのか、お恥ずかしい限り。

コイルはミシンの下糸用のボビン(プラスチック製-100円ショップでも売ってます)に0.3mm位のウレタン線をガラ巻きしたものです。細い線で巻き数を増やすと抵抗が高くなって力不足になることがあります。線の直径をDとすると、同じボビンの断面積に巻ける巻き数はDの自乗に反比例します。線の総延長は巻き数に比例しますから、やはりDの自乗に反比例します。電源電圧が同じなら電流はDの自乗に比例して線の総延長に反比例しますが、今の場合長さがDの自乗に反比例なので、結局電流はDの4乗に比例します。起磁力は電流と巻き数の積なので、結局Dの自乗に比例となり、細い線で沢山巻くと起磁力不足になります。
適正な電源電圧はコイルの出来具合によるのですが、動画のは5Vのスイッチング式ACアダプタを使っています。
コイルと並列に発振回路内臓型の圧電ブザーを接続して、ピピピと鳴るようにしています。ブザーがうるさいので黄色い丸いシールで穴を塞いでいます。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 3

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

  • 大同跟?

    Excerpt: http://hi.baidu.com/dtdear3 大同 Weblog: 大同跟? racked: 2013-05-20 00:34